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<選択肢>
エピローグ・・・スチル
数日後・車内。
ホッと息をつくエドワード。
「・・・・・・無事に終わってホッとしたよ。どうなることかと思ったから」
「はい。でも、本当に無事に終わって良かったです」
笑顔を向けると、にこやかな表情を返してきます。
安堵している理由は・・・・・、さっきまで両親への結婚報告をしていたから。
(エドがあんな感じになるなんて、ちょっと可愛かったな・・・・・・)
高級そうな和風料亭の個室。
国王は急な公務で同席出来なくなった為、せめて場所だけでもと・・・豪華な場所に。
(結婚の報告だから、正装を着たってエドが言ってたけど・・・・・・でも・・・・・・)
隣にいるエドワードは、シャルル王国の伝統の正装を着て、ピンと背筋を伸ばして正座をしてました。
(この格好で和室は、なんだかちょっと違和感があるかも・・・・・・)
「・・・・・・なんだか緊張するね」
「大丈夫ですよ、エドなら」
「そうかな? あれだけ世間を騒がせてしまったし・・・・・・悪い印象を持たれているかもしれないよ?」
「そんなことありません。私は・・・・・・エドが紳士でとても優しいことを知っています。それはきっと私の両親にも伝わるはずです」
「○○・・・・・・」
その時、個室の襖が開き・・・再びエドワードの背筋がシャンとします。
(ふふっ・・・・・・やっぱりなんだか可愛い・・・・・・)
両親の姿が見えると同時に、スッと立ち上がり、軽くお辞儀。
二人も軽く会釈し、向かい合うように座ります。
「どうぞ、お座りください」
エドワードは腰を下ろし・・・。
視線は主人公へ。
「久し振りだな。○○」
「元気そうでなによりだわ。それにしても、エドワード様とだなんて・・・・・・ここまで来るまでは、信じられない気持ちでいたけど・・・・・・」
視線はエドワードへ。
「この度は遠いところにご足労いただき、誠にありがとうございます」
少し微笑みを浮かべた後、真剣な顔つきで見返し。
「突然、お呼び立てしたうえ、初対面でいきなりこのようなことを申し上げるご無礼をお許しください」
そのまま後ろに下がり、頭を畳につけるように下げます。
辺りがシンと静まり返り、カコン・・・・・とししおどしの音。
「きっと・・・・・・いえ、必ず○○さんを幸せにするとお約束します。ですから・・・・・・」
両親を見て。
「・・・・・・○○さんを僕にください!」
(エド・・・・・・)
さきほどより一層真剣な眼差しで父親を見るエドワード。
暫くの間、じっと見つめ返し・・・。
「ははは! エドワード様、そんなに固くならないでください。・・・・・・なあ母さん」
(え・・・・・・?)
「ええ、ええ。どうぞお顔をお上げください。いくら娘のためとはいえ、一国の王子が、そんなふうに簡単に頭を下げるものではありませんよ」
(お、お母さん・・・・・?)
両親の意外な反応に驚いた二人は、思わず顔を見合わせます。
「じゃあ、もしかして・・・・・・」
「あなたが選んだ人でしょ? そりゃあシャルル王国の王子って聞いて最初は驚いたけど・・・・・・でも、私たちは信じているわ。・・・・・・そうよね、お父さん?」
「ああ、エドワード様・・・・・・どうかうちの娘をよろしくお願いします」
頭を下げる父親に、エドワードは慌てて再び頭を下げ。
「あ、いえ、こちらこそっ!」
「ふふっ・・・・・・」
つい思い出し笑いをすると、顔を覗き込まれます。
「あ・・・・・・もしかして、さっきのこと思い出してるな」
「だって、あんな背筋をピンとして緊張したエド、初めて見たから・・・・・・」
少し拗ねたように見て。
「それは仕方ないよ、僕だって今まで緊張なんてしたことなかったんだから」
「え・・・・・・そうなの?」
「ああ。あの会見のときも、全国に生中継だったけれど・・・・・・僕はキミのことを国民に紹介できる喜びに満ちあふれていて、まったく緊張してなかったし」
「全国に生中継って・・・・・・じゃあ、あのキスも・・・・・・?」
一気に顔が熱くなる主人公に対し、エドワードは涼しい顔で頷きます。
「・・・・・・なるほど。言われてみれば確かにそうだね。ははっ・・・・・・そう考えたら少し恥ずかしいな」
(な、何をのんきな・・・・・・)
真剣な表情を向け。
「でも・・・・・・キミの両親は一言も怒らなかったね。あれだけキミを振りまわしたうえに、あんな会見まで開いたというのに・・・・・・」
「そんな・・・・・・少なくとも私は振り回されたなんて思っていませんよ」
「ありがとう。・・・・・・深く澄んだ湖のような広い心のご両親に育てられたから、キミもそんなふうに、僕を包み込むほど愛情豊か・・・・・・なのかな」
「そんなこと・・・・・・」
「しかし僕は、そんなキミへの想いに打ち勝つ精神力がなかった」
「え・・・・・・?」
(精神力・・・・・・)
「たとえどんなに反対されても、引かない覚悟はあったんだが・・・・・・とても悔しい・・・・・・」
(何? 何を言ってるの・・・・・・?)
「エドワード様は、足をしびれさせてしまったことを、おっしゃっているんだと思います」
(あ・・・・・・)
「あんあふうによろけてるの、エドっぽくなかったですもんね」
クスクス笑っていると、少し唇を尖らせ。
「確かに、あんな無様な姿を人様の前で・・・・・・なんとも悔しいが、私も人の子、苦手なものはある」
「あれ・・・・・・もしかして、開き直っていませんか?」
頬を人差し指でツンとつつくと、みるみる表情を壊し・・。
「いや、そんなつもりはなかったんだけど・・・・・・」
言いながら、視線は窓の外へ。
「あ・・・・・・すまない。少し車を停めてくれるか?」
車は停止。
「ちょっと待っていてくれるかな?」
笑顔につられ車を降りようとすると・・・手を取り、甲にキス!
(え・・・・・・?)
「○○姫は・・・・・・このままこちらでお待ちいただけますか?」
車内。
「ただいま」
(なんだかうれしそうだけど・・・・・・)
「どちらに行かれていたのですか?」
聞くと、唇に指先が触れ・・・。
「秘密だよ」
城に着くと、バラ園で休憩。
(さっきの・・・・・・結局、なんだったんだろうなあ・・・・・・)
「心ここにあらず・・・・・・だね」
「あ・・・・・すみません」
「もしかして、キミの美しいその顔を曇らせるようなことを、僕はしてしまったのかな?」
悲しげに揺れるエドワードの瞳。
「あ、いえ・・・・・・」
「・・・・・・そう? それなら、ルイスがいれてくれたローズティーで、お茶にしよう」
「・・・・・・はい」
エスコートするように手を取り、バラ園のテーブルへ。
(うん、やっぱり・・・・・・いい香り・・・・・・)
ローズティーの匂いに魅せられていると・・・・・フッと微笑み。
「ああ・・・・・・この気高く優しい香り、久しぶりだな」
(え・・・・・・)
「あの、最近はあまり飲まれていなかったんですか?」
かすかな笑みを浮かべたまま、口をつぐむエドワード。
「お好きな銘柄でしたのに、パタリとおやめになりましたよね」
(やめた・・・・・・?)
眼差しに観念したのか、エドワードの顔が少し赤くなります。
「そうなんだ。ここでキミと別れたあの日から・・・・・・ローズティーは一度も飲んでいない」
「どうして・・・・・・ですか?」
手元のローズティーを見つめ。
「好きな物を我慢すると、願いが叶うかもしれないと・・・・・・どこかで聞いたことがあってね。けれど、今はもう、その願いが叶ったから」
(あ・・・・・・もしかして、その願いって言うのは・・・・・・)
激しく高鳴っていく鼓動。
箱が差し出され・・・・・。
「これを受け取ってほしい」
「これ・・・・・・は?」
「開けてみて」
(な、なんだろう・・・・・・)
受け取った箱を開けると・・・・・宝石がひとつ付いているシンプルなデザインのネックレス。
「すごくキレイ・・・・・・。エド、これを私に?」
「ああ。さきほど帰ってくる途中で、少し車を停めさせてもらっただろう?」
(あ・・・・・・あのときに・・・・・・?)
「結婚指輪は代々受け継がれているもので、婚約の儀式のあとじゃないと渡せない。だからそれまでの間、代わりにこれを・・・・・・」
「でも・・・・・・こんな高そうなもの、受け取れません・・・・・・」
返そうとするものの、エドワードはそれを受け取らずに穏やかな瞳だけを向けます。
「・・・・・・キミに似合うと思って選んだんだ。婚約の証として・・・・・・つけてくれないかな?」
熱い瞳を受け・・・・・。
「わかった・・・・・・エド、ありがとう」
スッと前に方膝つくと。
「姫・・・・・・。ぜひこの私にネックレスをつけさせていただきたいのですが・・・・・・おつけしてもよろしいでしょうか?」
「・・・・・・はい」
頷くと、ネックレスを手に、椅子の後ろへ。
「・・・・・・月の妖精たちが舞い踊る頃・・・・・・僕の部屋に来てくれないか」
その夜。
エドワードの言葉どおり、部屋へ。
(本当に来て良かったのかな・・・・・・)
扉を開けるのを躊躇っていると、突然扉が開き・・・エドワードが顔を覗かせます。
「やあ、月の妖精たちもお待ちかねだよ・・・・・・」
肩を抱かれ、部屋の中へ。
(き、緊張する・・・・・・)
促されるまま、ベッドに座り・・・。
エドワードが片手を鳴らすと、ワゴンを押したルイスが入ってきます。
ワゴンには、シャンパンと、美しい装飾のフードカバーでおおわれた皿。
「失礼いたします」
お辞儀をし、二人グラスにシャンパンを注ぎます。
「どうぞ、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」
心からの笑みを向け、部屋から退室。
「それでは、ふたりの未来に・・・・・・」
シャンパングラスを掲げるエドワードを見て、ふとワイナリーでの出来事を思い出します。
「また、あのときのように酔っぱらっちゃっても知りませんよ?」
「今度は僕だけ酔ったりしないよ。そんなにキツイものじゃないし・・・・・・」
言葉が途切れると、とろけるような微笑を向け。
「どうせなら・・・・・・キミに酔ってほしいからね」
「私に・・・・・・?」
「ああ。もちろん、シャンパンじゃなくて・・・・・・ふたりきりの時間に。
それに・・・・・・こういうときは僕だけじゃなく、ふたりで気持ちよくなりたいからね」
(き、気持ちよくって・・・・・・)
動揺のあまりどう対応していいか分からず、視線を彷徨わせていると・・・。
ふとシャンパンの横に置かれたキレイなフードカバーが目に止まります。
「あの・・・・・・これはなんですか?」
「・・・・・・なんだと思う?」
(何って・・・・・・なんだろう?)
じっと見つめて考えていると・・・。
エドワードは立ち上がり、フードカバーを開けます。
(あ・・・・・・)
そこにあったのは、忘れもしない二人の思い出の味。
「マカロン・・・・・・」
「キミと一緒に・・・・・・どうしても食べたくなって」
マカロンを二つに割ると、片方を差し出します。
口に入れると、ふんわりと広がる甘く濃厚な味。
あのときと同じフランボワーズ味のマカロン。
(おいしい・・・・・・どうして甘い物は好きな人といる時間を、より幸せにしてくれるんだろう・・・・・・)
エドワードの顔がスッと近づいてきて・・・。
「あの・・・・・・?」
「こうしてまた、ふたりしてマカロンを食べられる日が来るなんて・・・・・・」
じっと見つめられます。
「あの・・・・・・?」
目を凝らすようにしてみるエドワードに・・・。
「もしかして・・・・・・コンタクト、されていないんですか?」
「そう・・・・・・さっき落としてしまって・・・・・・だから、もっと僕にその可愛い顔を見させて・・・・・・?」
頬に手が添えられると同時に、重なる唇。
かすかに広がっていくフランボワーズの味は、新しい思い出を刻み込みます。
「今日は・・・・・・部屋に戻る? それとも、このまま・・・・・・」
言ってすぐ、額にキス。
(このまま・・・・・・って・・・・・・)
目が合い、ドキン!
「か、考えさせてください・・・・・・っ!」
思わず立ち上がり、離れようとすると・・・いきなり腕を掴まれます。
(あ・・・・・・)
驚いて振り返ると同時に、低い声。
(ここでスチル!)
「離さないよ・・・・・・○○」
突然、名前を呼ばれ、一気に鼓動が激しくなります。
穏やかに見つめる瞳。
そこから感じる強い意志に、鼓動は共鳴し・・・。
「もちろん無理強いはしない。・・・・・・けれど、考えさせてほしいっていうことは・・・・・・嫌ではないってことだよね?」
頭の中は真っ白。
(そ、そうなの・・・・・・かな・・・・・・私・・・・・・)
「でも・・・・・・もし本当に嫌なら、そう言っていいんだよ」
少し切なそうな声の響きに、胸がキュッと締めつけられます。
「嫌だなんて・・・・・・そんなことは絶対にありません。でも、心の準備とか・・・・・・その・・・・・・気持ちの整理とか・・・・・・あの、エドとは一緒にいたいんですけど・・・・・・」
(ああ・・・・・・私、何、言ってるんだろう・・・・・・?)
気持ちを落ち着かせようと深呼吸した瞬間。
エドワードが笑みを漏らすのが聞こえてきます。
(え・・・・・・?)
「あの・・・・・・どうして笑うんですか?」
グイッと引き寄せると、そのまま抱きすくめられ・・・・・。
(あっ・・・・・)
「どうして笑っているのかって?それはね・・・・・・キミの顔がさっきからバラのように真っ赤で可愛いからだよ」
(は、恥ずかしい・・・・・・見えてたんだ・・・・・・)
温かい腕に包まれながら、言葉に少し違和感を覚えます。
「あれ・・・・・・もしかして・・・・・・」
瞳をじっと見つめると、フッと微笑み。
「どうやらバレちゃったみたいだね。・・・・・・キミとの大切な夜に、コンタクトをしておかないわけないだろう?」
「そ、そんな、さっきしていないって・・・・・・」
「ごめんね。そう言うと少し油断してくれるかと・・・・・・でも、おかげでキミが恥ずかしがる姿が見られたよ」
「も、もう・・・・・・エドがそんなに意地悪だったなんて・・・・・・」
拗ねたように横を向くと、ふわりと抱きしめられます。
「僕だって自分がこんなことをするなんて思わなかった。キミに対しては常に紳士的でありたいし・・・・・・でも・・・・・・」
ギュッと力が込められ、耳元で囁くように。
「キミのほかの表情もすごく可愛くて・・・・・・すべてを見てみたくなって・・・・・・」
唇は・・・頬、首筋へ。
(エ・・・・・・ド・・・・・・?)
胸元で止まると・・・そこには、エドワードからもらったネックレス。
まるで愛を誓うかのように、そのネックレスヘッドに唇で触れます。
「ノーブル様のところのネックレスは・・・・・・?」
「あれは・・・・・・私たちの子どもに譲ろうと思っています」
「・・・・・・え?」
「今の私には・・・・・・エドからもらった、このネックレスがありますから。だから、あれは私が母から譲り受けたように、今度は子供たちの世代へ・・・・・・」
「そうか。じゃあ・・・・・・キミに似た可愛い娘でないとな」
「エドってば・・・・・・」
フッと真剣な瞳で見つめ・・・。
「そのお守りに負けないよう、これからは僕がキミのことを守る。そして・・・・・・僕も・・・・・・キミに教えたいと思う。・・・・・・どれだけ僕が○○を愛しているのかを・・・・・・」
抱き寄せられ、ベットへ。
お互いの身体から伝わってくる温もり。
私はその愛を一心に受け止めながら、自分もまた彼に愛を伝えるのだった・・・・・・。
翌朝。
朝の陽射しにまぶしさを感じながら、ボンヤリと目を開けます。
(・・・・・・私・・・・・・昨日は・・・・・・)
昨晩の事を思い出し、一気に熱くなる身体。
(は、恥ずかしい・・・・・・)
身体を縮めていると、近くにエドワードがいないことに気が付きます。
(あ・・・・・・)
蘇ってくるのは、ノーブル・ミッシェル城での出来事。
(まさか・・・・・・またあの日みたいに・・・・・・)
背筋に冷たいものが走り、慌てて上半身を起こすと・・・。
同時に、部屋にエドワードが入ってきます。
「ああ、起きたんだね。おはよう、○○」
ホッとしながら見ると、その手には朝食が二人分。
「・・・・・・どうしたの?」
「また・・・・・いなくなってしまったのかと・・・・・・」
目を伏せると、エドワードは朝食を近くに置き・・・隣へ。
安心させるように優しく抱き寄せられます。
「朝食を取りに行っていたんだ。可愛いキミの寝顔を誰にも見せたくなかったからね」
「エド・・・・・・」
「・・・・・・心配しなくても、もう二度と離れていかないし・・・・・・キミを離さない」
耳にキス。
「あの・・・・・・朝ご飯にしましょうか。冷めてしまいますし」
照れくさくなってそう言うと、クスッと笑い。
「そうだね。・・・・・・それならせっかくだから僕が食べさせてあげようか」
「えっ? あ、いえ・・・・・・大丈夫ですよ、自分で食べられますから」
食事を始めるものの、切なげな瞳を向けられます。
「僕がしたいんだけど・・・・・・ダメ・・・・・・かな?」
(そ、そんな悲しそうな顔をされても・・・・・・)
「・・・・・・デザートくらいなら・・・・・・」
「本当かい? じゃあ、これを・・・・・・」
嬉しそうに、自分の皿にあったイチゴをフォークで刺し・・・。
「はい、あーんして」
口を開け、イチゴを食べさせてもらいます。
「どう?」
「甘くておいしいです」
笑顔を返すと、唇にチュッとキス。
(え・・・・・・)
「ああ、ホントに甘いね。まるでキミみたいに」
私はエドワード様の笑顔を前に、かみしめていた。
もう誰かに邪魔されることも、我慢することもない・・・・・・この幸せな時間を。
甘いなぁ・・・・・♪