<選択肢>
5話・・・スチル
選択肢なし
手術室の前。
怜司から電話がかかってきます。
皆から離れて通話。
「・・・もしもし」
『・・・○○?』
「うん・・・」
『・・・今どこ? ひょっとして病院?』
「うん・・・そう」
『会いたいんだけど』
「・・・ごめん、怜司。私、行けない。透は私にとって、かけがえのない仲間なの。だから・・・」
『・・・分かった』
「怜・・・っ」
途中で電話は切られます。
(やっぱり伝わらなかったのかな、気持ち・・・。怜司とはもう会えないの・・・?)
思わず座り込み・・・。
「ダメだなぁ、私・・・」
不安と寂しさで涙が頬を伝います。
(泣いてる場合じゃないのに・・・)
「大丈夫?」
(え・・・、この声・・・。まさか・・・)
視線を上げると、そこには・・・。
「れ・・・い、じ・・・」
(少しだけ優しい・・・『恋人』の時に見せてくれた怜司の笑顔・・・)
「どうして・・・?」
「マネージャーさんが電話くれたんだ」
「彩が・・・?」
「ああ。○○を支えてあげてくれって。だから・・・来たよ」
視線を合わせるようにしゃがみこむと、涙を拭ってくれます。
「でも、どっちか選べって・・・」
「それは今でも変わらない。いつかはどっちかは選んでもらうよ。だけど・・・」
「・・・だけど?」
手を引いて、立たせてくれる怜司。
「ライブを見て、気づいた事がある」
「え・・・?」
「俺はライナスにいる○○の事が好きなんだって」
「怜司・・・」
(ちゃんと伝わったの・・・? 私の気持ち・・・)
「仲間の事を大事に思う○○が・・・俺は好きなのかもしれないね」
そっと抱き寄せられ・・・。
(優しくされると涙が止まらない・・・。 ・・・今日は泣いてばっかりだな、私・・・。何も言えないよ。もう、涙しか出てこないよ・・・)
「今までつらかったよね? ・・・ごめん」
「・・・・・・ううん・・・っ」
その時、手術室のランプが消えます。
「あ・・・、手術が終わったみたいだ」
「えっ・・・」
怜司の言葉に手術室へ目を向けると、中から先生が出てくるところでした。
「手術・・・終わったの?」
「はい。難しい手術でしたが・・・」
「透は・・・っ」
「成功しました。後は本人の回復力を信じましょう」
「成功・・・」
(・・・透・・・良かった・・・!)
*****
数ヵ月後。
ライナスはテレビ局の楽屋にいました。
(久しぶりの生放送・・・、やっぱりちょっと緊張するな・・・。 あ、怜司だ・・・。こうして収録が一緒になるの・・・久しぶりだよね。 病院でのことを思い出すと・・・少し照れちゃうな・・・)
「本日の1組目はSIVAのみなさんでーす。よろしくお願いします」
「お願いします」
トークの最中、不意に怜司に微笑まれます。
(え? 怜司・・・今私を見て笑った? 何だろう、ちょっとドキドキする・・・。気のせいかな?)
「新曲も好調なSIVAですが・・・怜司さんには少し前に熱愛報道がありましたね。結局、本当のところはどうなんですか?」
「はい、本当です」
ニッコリと笑い、サラリ。
(・・・! れ・・・怜司!? 何言ってるの!?)
「(へー、やるじゃん、怜司)」
「(透! そんな事言ってる場合じゃ・・・!)」
透と小声でやり取りしていると、怜司が目の前まで来て・・・。
「○○、こっち」
手を引かれ、隣に座らされます。
「(ねぇ、ちょっと、どういう事!?)」
「いいから、いいから。本当の事言っただけなんだしかまわないんじゃない? それに・・・本当に言って欲しくなかった? 顔にはそんなふうには書いてないけど」
(・・・っ、もう、余裕の顔して・・・)
「本当にわがままなんだから・・・」
「俺がわがままなのは、○○が一番知ってるでしょ?」
「では、本当なんですね!?」
「・・・・・・」
(ど・・・どうしよう・・・)
「あの曲・・・俺のために書いてくれたんだよね?」
(え・・・、伝わってたんだ・・・ちゃんと・・・良かった)
「・・・うん・・・」
「俺はライブの時に、○○の言葉を聞けただけで・・・嬉しかったよ」
(怜司・・・その微笑みには敵わないよ・・・)
「・・・はい。付き合ってます」
この言葉にスタジオは騒然となります。
(やっぱり大騒ぎになっちゃった・・・)
「これで、明日のスポーツ紙、また一面を飾っちゃったね」
ここでスチル!
怜司はふっと微笑み、キス♪
「・・・怜司!」
「・・・しっ、黙って」
「・・・んっ・・・」
更に深くなる口付け。
(みんなの前で恥ずかしい・・・。でも、逆らえない・・・)
「○○・・・こういう気持ちを大好きって言うんだね」
「私も・・・大好き」
(ずっと・・・)
「あれ? ・・・もしかして、やっとオチた?」
「・・・うん」
微笑んで頷くと、怜司が嬉しそうに微笑みます。
スタジオの騒ぎも、もう遠いもののように感じら・・・。
たまらない幸せに頬が熱くなっていく。
「あ、それと、もう知ってるかもしれないけど・・・」
「何?」
「俺たちの新曲も、○○のために書いた曲だから」
もう一度優しいキス♪
今、『ゲームの恋』が終わり、『本当の恋』が始まりを告げる。
たくさん、涙を流した。
怜司の事が信じられなくて、苦しい日もあったけど・・・ ・・・それが、今の幸せを形作ってくれてる。
きっと、もう離れる事はないよね・・・。
ううん・・・もう、離さないよ。この『本当の恋』を・・・。
怜司、大胆なことをしました(笑)
ハッピーエンド♪
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