<選択肢>
5日目・・・スチル
選択肢なし
相変わらず記憶は戻らないまま。
でも、昨夜抱きしめてくれたあの時から二人の距離がぐっと近づいたような気がします。
普通に、ごく普通に生活してみることに・・・。
「ねえ、もしよかったらドライブにでも行かない?」
誘うと、御堂さんは少し戸惑いながらも頷いてくれます。
「じゃあ、みゅうも一緒に連れて行こうか?」
これに、にっこり微笑み・・・。
「いいお天気で、気持ちがいいね」
話しかけると、様子がおかしい事に気づきます。
「どうかしたの・・・?」
心配になって声をかけると、車はゆっくりとスピードを落とし、ある建物の前で停止。
「ミドウさん・・・?」
そこは・・・・・。
「!」
以前二人で訪れた事のある協会!
みゅうを抱っこして車から降りると、手からすり抜けて協会へ行ってしまいます。
みゅうを追いかけ、教会の中へ。
「・・・」
協会の中を見回す御堂さん。
(何か・・・ 思い出せそうなのかな?)
・・・・・・私たち、恋人なんだよ?
思わず、言いたい気持ちに駆られますが・・・それだけは自分の口から言っていけないような気がします。
「みゅう、ダメでしょ?」
足元にまとわりついてきたみゅうに言いながら、なんとか冷静でいられるように心を沈めようとしていると・・・。
「あなたと以前、ここに来たことが・・・ありますよね」
「・・・!」
「そして・・・大切な約束を交わした気がする」
「ミドウさん・・・」
その時、はっきりと分かります。
私は・・・ミドウさんを愛している。
記憶があろうと、なかろうと・・・その気持ちは変わらない。
覚悟を決め・・・・・。
「私とミドウさんは・・・恋人同士なんです」
御堂さんは、はっとしたような表情に。
「私は・・・ミドウさんを愛しています。記憶があっても、なくても・・・その気持ちに変わりはありません」
「○○様・・・」
その時、突然みゅうの泣き声がします。
いつの間にか協会の十字架の先に登っていて・・・今にも落ちそうに!
「みゅう! 危ない!」
思わず叫ぶと、御堂さんが即座に走り出し、正面の祭壇へ。
そして間一髪、落ちてきたみゅうをしっかりと受け止めます。
「みゅう、よかった・・・!!」
が、御堂さんは大きくバランスを崩し、このままでは祭壇の階段に頭が・・・!
「カナメさん!!」
気がついたら勝手に体が動き、走り出してました。
(この前の二の舞にしちゃ、絶対ダメ!!)
手を伸ばして、崩れる御堂さんの体を支え・・・。
「あ・・・!!」
代わりにバランスを崩し、階段を落下。
頭に強い痛みが走ります。
「○○様! 大丈夫ですか!?」
遠くから聞こえる声。
(よかった・・・ ミドウさん、無事だったん・・・ だ・・・・・・)
西園寺家に初めてきた日の夢を見ている中。
「○○! ○○!!」
名前を呼ばれ、意識を取り戻します。
「ミドウ・・・さん?」
まだぼんやりした頭で見上げると・・・。
「・・・よかった!」
目を開けると、抱きしめられます!
「ミドウさん・・・?」
その様子は、さっきまでのどこか所在無さげな御堂さんではなく・・・・・。
「もしかして・・・」
(記憶が戻ってる!?)
思わず、顔を覗き込むと・・・静かに微笑み。
「さっき・・・すべて思い出したんだ。○○が・・・私の名前を呼んでくれたこと。それに・・・○○が必死になって俺を助けてくれた姿を見て・・・すべて思い出したんだ」
「よかった・・・!」
記憶が戻ってよかった。
そして、御堂さんが、御堂さんに戻ってくれて・・・。
大好きな御堂さんに戻ってくれて・・・本当に良かった。
御堂さんをぎゅっと抱きしめます。
「いろいろと・・・心配をかけてしまったね。ごめん」
「そんなこと・・・!」
「それに・・・記憶を失っている間、○○は本当に献身的にいろいろしてくれて・・・ありがとう・・・」
首を左右に強く振り・・・。
(そんなこと・・・)
だって、今、こうして・・・御堂さんを感じることが出来る・・・。
こうして・・・また御堂さんと会えたんだもん・・・。
離れていた時間を取り戻すかのように・・・きつく抱きしめあいます。
「なんか、いろんなことがあったね」
「うん・・・」
ふっと微笑み合い・・・。
(今・・・ こうして、ミドウさんと同じ時を過ごせていることが、どれほど幸せなことか・・・よく分かった気がする)
もっと一緒にいたい、ずっと一緒にいたい・・・。
好きだからこそ、胸に溢れてくる想い。
でも・・・大切なことを忘れていたのかもしれない。
お互い、確かに想いあっているということ。
そのことが、どれほど幸せなことか・・・。
今、目の前にいてくれる、大切な人を・・・当たり前のように思う傲慢な想いが・・・いつしか自分の中にあったような気がする。
忘れてはいけない大切なことを・・・神様が、気づかせてくれたのかもしれない。
「ミドウさん・・・」
「・・・?」
「愛してる・・・」
「○○・・・」
真っ直ぐ見つめられ・・・・・。
「・・・ありがとう。いつも・・・私の傍にいてくれて。私と一緒に生きてくれて。いつも・・・いつも、ありがとう」
「○○・・・」
どうか・・・この幸せを、当たり前に思う傲慢な私でありませんように。
たくさんの自戒と祈りを・・・私は胸に抱きしめていた。
─────屋敷。
「・・・実は、考えてることがあるんだ」
「なあに?」
「ここ最近、ずっと考えてた。でも・・・今回のことがあって、きちんと話をしてみようと思うことができたんだ。・・・聞いてくれる?」
御堂さんのただならぬ気配に、少し緊張しながら頷きます。
「実は・・・西園寺家を出ようと思う」
「えっ!?」
「すぐにという訳じゃないし、西園寺家の執事を辞める訳じゃないんだ。西園寺家のお屋敷に住まわせてもらうのでなく外から、通いながらでも執事をさせて頂こうかと考えているんだ」
「そうなんだ・・・! でも・・・」
(私たち離れて暮らすことになっちゃうよ・・・?)
寂しい気持ちで一杯になりながら、御堂さんを見上げると・・・穏やかな微笑を浮べながら、見つめてました。
「それで・・・お願いがあるんだ」
「なあに?」
姿勢を正すと、まっすぐ見つめられ・・・。
それにつられて、背筋を伸ばして見つめ返します。
「西園寺家を出て・・・」
「うん・・・」
「家を、ちゃんと家を持とうと思ってるんだ」
「えっ・・・?」
家を・・・持つ?
それって・・・どういう・・・?
驚いて、見つめると・・・・・。
「その・・・○○に、ついてきて欲しいと思っているんだ」
「それって・・・」
「結婚するための準備を、そろそろ始めたいんだ」
「ミドウさん・・・!」
「一緒に、ついてきてくれるだろうか・・・?」
「・・・はい、喜んで!」
返事を聞くと、ほっとしたように大きく息をつきます。
「よかった・・・。久しぶりにこんなに緊張したよ」
抱き寄せられ、鼻先を髪へ。
「○○がどれほど大切な存在か・・・今回のことで、よく分かったんだ」
「ミドウさん・・・」
「一生、大切にする。だから・・・これからの人生、ずっと一緒にいて・・・ください」
「・・・ありがとう」
抱きしめる腕に力がこもると・・・突然抱き上げられます!
「きゃっ!」
軽々と抱いて、ソファへ。
「ミドウさん・・・」
「・・・久しぶりに、○○を感じることができる」
覆いかぶさってきて・・・・・。
「・・・」
「○○・・・」
少しだけ意地悪そうな笑顔を浮かべると、顔を胸元へ・・・。
「・・・!」
「・・・あったかい」
喋ると、その吐息が胸元にかかってゾクゾクします。
「・・・ミドウさん」
「カナメって・・・」
「えっ・・・?」
「カナメって・・・呼んで」
「・・・カナメ・・・・・・さん」
「愛してる・・・」
「愛してる・・・」
「もう二度と・・・○○を忘れたりしないから・・・」
(ここでスチル!)
私たちは、そのまま・・・お互いを確かめ合うように、何度となく抱きしめ合い、キスを重ねた。
そして互いの存在を確かめ合う。
髪・・・ 大きな背中・・・ 細くて綺麗な指先・・・ そして、冷たい唇。
そのすべてを・・・愛おしいと思った。
愛しくて、たまらなかった・・・。
ミドウさんが記憶を失くした数日間。
あれは・・・神様からのプレゼントだったのかも知れない。
今、目の前にいる大切な人を・・・どうか見失うことがありませんように。
そんなシンプルで・・・大切なことを、幸せすぎて、わがままになっていく日々のなかで忘れてしまわないように・・・。
「かならず幸せにするよ・・・」
「・・・ありがとう」
私たちは微笑み合い、またそっと唇を重ねる。
そして・・・また幸せを感じる。
その唇が・・・あたたかいことに。
私はきっと、もう一生忘れない。
大切な人が、当たり前のように傍にいてくれている。
それがどれほど幸せで、尊いことか、ということを・・・。
ハピエンの最後は、毎回甘め♪
新婚生活が覗いてみたい・・・・・!←ヲイ
スポンサーサイト